サマースキャンダル×× 〜Episode,00〜【短】
***
有紀の協力を得ることができてから一ヶ月半ほどが経った、八月の四週目──。
朝早くに駅に着いた俺は、有紀が待ち合わせ場所に指定した改札口付近に向かって足早に歩いていた。
人混みの流れに沿って歩きながらもその速度は早くなっていく一方で、周囲の歩みがやけに遅く感じる。逸る気持ちを抑えられなくて何度か肩がぶつかり、謝罪を口にしながら足を進めていく。
ようやく待ち合わせ場所が見えた直後、スマホを片手に話をしている遥さんの姿が視界に飛び込んできた。
今までと同じようにまた動けなくなりそうになったけれど、自分自身を奮い立たせるかのように拳を握って歩を進める。
それから小さな深呼吸をひとつ済ませ、緊張感を隠すように背筋を伸ばした。
遥さんの電話の相手は、きっと有紀だったのだろう。電話を切られてしまったらしく、彼女はスマホを呆然と見つめている。
そりゃ、びっくりするだろうな。
有紀の計画を聞いた時、弟の俺だって言葉を失った。もちろん、そのあとすぐに反対もした。
俺は『遥さんに会わせて欲しい』とは頼んだけれど、ほとんど面識もないのに旅行に行くなんて考えてもみなかったし、そこまでのことを頼むつもりはなかったから。
遥さんは、きっと困っているだろう。
そんな彼女を前にして、ちゃんとエスコートできるだろうか。
緊張と少しの不安を抱えながら、遥さんのすぐ後ろまで辿り着いた。
たった三日間の夏休みが、始まる。
勝手なことしてごめん、遥さん……。
でも、絶対に泣かせたりしない。有紀との約束はちゃんと守ってみせるよ。
だから……。
「あの……瀬波遥さん?」
どうか、俺と一生をかけた恋をしてください──。
有紀の協力を得ることができてから一ヶ月半ほどが経った、八月の四週目──。
朝早くに駅に着いた俺は、有紀が待ち合わせ場所に指定した改札口付近に向かって足早に歩いていた。
人混みの流れに沿って歩きながらもその速度は早くなっていく一方で、周囲の歩みがやけに遅く感じる。逸る気持ちを抑えられなくて何度か肩がぶつかり、謝罪を口にしながら足を進めていく。
ようやく待ち合わせ場所が見えた直後、スマホを片手に話をしている遥さんの姿が視界に飛び込んできた。
今までと同じようにまた動けなくなりそうになったけれど、自分自身を奮い立たせるかのように拳を握って歩を進める。
それから小さな深呼吸をひとつ済ませ、緊張感を隠すように背筋を伸ばした。
遥さんの電話の相手は、きっと有紀だったのだろう。電話を切られてしまったらしく、彼女はスマホを呆然と見つめている。
そりゃ、びっくりするだろうな。
有紀の計画を聞いた時、弟の俺だって言葉を失った。もちろん、そのあとすぐに反対もした。
俺は『遥さんに会わせて欲しい』とは頼んだけれど、ほとんど面識もないのに旅行に行くなんて考えてもみなかったし、そこまでのことを頼むつもりはなかったから。
遥さんは、きっと困っているだろう。
そんな彼女を前にして、ちゃんとエスコートできるだろうか。
緊張と少しの不安を抱えながら、遥さんのすぐ後ろまで辿り着いた。
たった三日間の夏休みが、始まる。
勝手なことしてごめん、遥さん……。
でも、絶対に泣かせたりしない。有紀との約束はちゃんと守ってみせるよ。
だから……。
「あの……瀬波遥さん?」
どうか、俺と一生をかけた恋をしてください──。