サマースキャンダル×× 〜Episode,00〜【短】
Episode,00
***
蝉の鳴き声が響き渡る、八月のある日──。
バスケ部の練習を終えた俺は、ジリジリと照り付ける太陽にうんざりしながら中学校から帰宅し、リビングにバッグを投げて冷蔵庫を開けた。
冷気が僅かに肌を撫で、茹だるような暑さで怠くなっていた体が少しだけ癒やされる。
ひとまずグラスに麦茶を注いで一気飲みし、手の甲で口もとを拭った。
「牛丼じゃん、ラッキー」
再び覗き込んだ冷蔵庫に入っていた昼食の牛丼をレンジで温め、グウグウと鳴るお腹の虫に急かされながらテーブルに着いた。
パートに行っている母親がいないのをいいことに、部活用のTシャツとハーフパンツを着替えもせずに牛丼にがっつく。
あっという間に完食したところで、玄関のドアが開いた音がした。
近づいてくるのは、ふたり分の声。それがドア越しにまで聞こえてきた直後、リビングに四歳年上の姉の有紀(ゆき)が入ってきた。
「なんだ、あんた帰ってたの」
ぞんざいな扱いに慣れている俺は、面倒臭さを感じながらも「おかえり」と返す。すると、有紀の後ろから清楚な雰囲気の女の子が顔を覗かせた。
「こんにちは。お邪魔してます」
真っ直ぐに俺を見たかと思うと、綺麗な二重の瞳でふわりと微笑まれて……。俺はなぜか心臓を掴まれたように苦しくなって、まるで全身が硬直したかのように動けなくなってしまった。
「これ、弟の柊(しゅう)」
有紀の投げやりな紹介のあと、女の子はミディアムヘアの黒髪を耳にかけながら俺を見た。
「はじめまして、瀬波遥(せなみはるか)です。有紀とはクラスメイトなの」
「よろしくね」と柔らかく笑う遥さんを前に、いつの間にか止まっていた息をなんとか吐いた。
蝉の鳴き声が響き渡る、八月のある日──。
バスケ部の練習を終えた俺は、ジリジリと照り付ける太陽にうんざりしながら中学校から帰宅し、リビングにバッグを投げて冷蔵庫を開けた。
冷気が僅かに肌を撫で、茹だるような暑さで怠くなっていた体が少しだけ癒やされる。
ひとまずグラスに麦茶を注いで一気飲みし、手の甲で口もとを拭った。
「牛丼じゃん、ラッキー」
再び覗き込んだ冷蔵庫に入っていた昼食の牛丼をレンジで温め、グウグウと鳴るお腹の虫に急かされながらテーブルに着いた。
パートに行っている母親がいないのをいいことに、部活用のTシャツとハーフパンツを着替えもせずに牛丼にがっつく。
あっという間に完食したところで、玄関のドアが開いた音がした。
近づいてくるのは、ふたり分の声。それがドア越しにまで聞こえてきた直後、リビングに四歳年上の姉の有紀(ゆき)が入ってきた。
「なんだ、あんた帰ってたの」
ぞんざいな扱いに慣れている俺は、面倒臭さを感じながらも「おかえり」と返す。すると、有紀の後ろから清楚な雰囲気の女の子が顔を覗かせた。
「こんにちは。お邪魔してます」
真っ直ぐに俺を見たかと思うと、綺麗な二重の瞳でふわりと微笑まれて……。俺はなぜか心臓を掴まれたように苦しくなって、まるで全身が硬直したかのように動けなくなってしまった。
「これ、弟の柊(しゅう)」
有紀の投げやりな紹介のあと、女の子はミディアムヘアの黒髪を耳にかけながら俺を見た。
「はじめまして、瀬波遥(せなみはるか)です。有紀とはクラスメイトなの」
「よろしくね」と柔らかく笑う遥さんを前に、いつの間にか止まっていた息をなんとか吐いた。