未熟女でも恋していいですか?
「えっ…」


まだ残っている車に驚く。

しかも、運転していた男はトラックの荷台に座り、しょげ込んでいる。



一体何が?

いや、ここは気にせず素通りを……



知らん顔で通り過ぎようとして二、三歩進む。



彼の顔は俯いている。

だから、視線も当然下向きなんだけれど。



(あーー、どうにも気になるっ!)



「あの…!」


「ん〜〜?」



見上げた人の視線は定まってない。

…と言うか、何処か虚ろだ。



「どうしたの?さっきの威勢の良さは捨てたの?」



人を笑いたいだけ笑ったくせに…と逆恨み。

高島という男はハハ…と短く笑い、か細い声で答えた。



「捨てた訳じゃねーけど、力が出ねぇんだ、今…」


「どうして?」


一歩だけ近付いた耳に聞こえたのは、大きなイビキのような音。



「ぐぅ〜〜〜」



「…何?今の?」


目を瞬かせて聞いたら荷台にいる人は力無く呟いた。



「……腹ペコアオムシの声とでも言っとくか……」


外国の絵本作家の絵が浮かんだ。

世界中で愛される作品は、母のお気に入りでもあった。



「腹ペコ…って、空腹なの?」


再び鳴る音を聞きつけ、呆れるように彼を見た。


「どうして?」


『サカン』って仕事してるんでしょうに…と言うまでもなく声が返る。



「仕事の料金未払いで何も食ってない…」


「いつから?」


「一昨日から…」



< 11 / 190 >

この作品をシェア

pagetop