未熟女でも恋していいですか?
「やっぱり佗しい…」


独り言も増えた気がする。

ぶんぶん…と頭を左右に振って仏壇へ向かった。



「お母さん、今夜はカレーよ」


語りかけるのも癖になっている。


「中辛にしたけどいいよね?」


母は甘口しか食べれなかった。

でも、私はそれでは甘過ぎてやれなかった。


「1人って悪いようで良いね」


自分好みに独占できる。

でも、決してそれをしたい訳じゃない。


「あの人…何してると思う?」


頭に浮かんだ人のことを問いかけた。

薄っすらだけど、母の顔が笑った様な気がした。


「わ、私、別に理由があって気にしてるんじゃないよ!ただ、きちんと食べてるのかなと思って……」


遺影に言い訳。

余計に裏がありそうな気がしてくる。


「続き作るわ」


立ち上がって仏壇を背にした。

襖を開けていると、両親のクスクス笑う声が聞こえそうな気がして閉めた。

この襖の滑りを良くしたのも高島。

あの男が我が家に居た痕跡は、今もあちこちに残っている。



(だから、いつまでも気になるのよ!)


そうだ。

そうに違いない。


グツグツ…とカレーを煮込んで頂いた。

煮込んでいる間に作ったサラダには貝割れ大根を刻んで入れた。


「こんな食材買うんじゃなかった…」


高島と囲んだ晩餐が思い出される。

味気のしないお一人様の食卓とは雲泥の差があった。


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