未熟女でも恋していいですか?
……やっぱりこの人ってアホ?


言いたくなるのを堪えて顔を覗いた。


落ち窪んだ目元には覇気がなく、空気しか出ていない口元はだらり…と下方へ沈んでいる。

明らかに空腹の状態でありそうな男を見て、知らん顔できる程の心情でもなかった。



「うちに来る?今夜はすき焼きにしようかと思ってたの」



母のお金ですき焼きにする。

忌明けの日、精進料理の詰まった折り詰めを食べながら決めていた。



50日間、お肉もお魚も食べなかった。

お豆腐とキノコとコンニャク。

主にそんな物ばかりで過ごしていたから。




「すき焼き……」



呟くと同時に大きく響くお腹の虫の声に、私は半年以上ぶりに大笑いした。



「あっはははははは!」



笑いながら涙が出てくる。

それを誤魔化すように空へ目を向けた。



高い空を見上げると、ツバメが巣作りを終えて飛び回っている。

季節はやっと変わり目を迎え、初夏が迫っているんだ…と教えられた。





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