未熟女でも恋していいですか?
「寺ん中で言い争うのも何だし、しっぽり話し込もうぜ」


(し…しっぽりぃぃ!?)


「何を」


辛うじて心の声を押さえ込んだ。


「カツラのお母さんのこと……とか?」


(それ今完全に思いついたでしょうが!)


ちらっと目を配ると、住職が立ち上がって笑っている。



「そ、そうね。折角だし……」


座り直した。


(えーん!お母さんのバカッ!)


「…じゃあ私は行ってくるよ。留守番を宜しく頼む」


宜しくっていつまで!?

私は男が駄目なんだってば!


「行ってらっしゃい。躓いて転ぶなよ、おっさん」


(おっさん……?)


お寺の住職をおっさん呼ばわりするなんてとんでもない男だ。

そもそも初対面からおかしな人だと思っていたけれど、ここまでとは知らなかった。



お堂の出入り口まで住職を見送り、その男は戻って来た。




「……さて」


畳の上に胡座をかいて座り込み、困った様な顔つきをする。



「あ…あの……」


「ん…?」


向けられた目線から目を逸らす。

怖い訳でもないけれど、何か居心地が悪い。


「い…行く宛があるって言ってたの、このお寺のことだったの?」


去る時に言っていた言葉を思い出した。


「…まぁな。ここはあのおっさん1人で暮らしてることは知ってたし住んでた所が火事に遭った時、少しの間住まわせて貰ってたから」


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