未熟女でも恋していいですか?
後を追いながら川面に近づく。

川幅の広さはどれくらいか分からないけれど、かなり大きな川だ。



「すごいね。滝まである」


段差の部分が小さな滝のように流れている。

流れも量も多い川の表面には多くの葦が生えている。



「……あっ、メダカがいる!」


流れの緩やかな岸辺に群れ、列を成している。


「可愛いー」


しゃがみ込んで見つめながら、メダカの学校の歌詞が思い浮かんだ。

そう言えば自分が教師になりたいと思いだしたのも、この歌を母から教わったのが始まりだった。


「さっきもそうやって川の中を睨んでたな」


言い方が悪い。

やっぱり再教育が必要と見た。


「睨んでたんじゃありません。思い出してたんです」


「何を」


「母との思い出を」


川の中に入ってカワニナを取ったり、綺麗な小石を探したりした。

私が子供の頃はお寺の側の川も澄んでいて、ハヤやゲンゴロウと言った絶滅危惧種の生き物も多く見られた。


「5歳で父が亡くなって、しょっちゅう母と納骨堂へお参りに行ってたの。だから、あそこには母との思い出が沢山あって…」


サラサラと流れる川音を聞いていると心が落ち着いて良かった。

仕事で忙しい母と遊べる、唯一の場所だった。



「お子様だな、やっぱり」


ここへ連れて来た男が笑う。

出会った時から強引で自己中心的で、でも、何処か優しい人だ。

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