未熟女でも恋していいですか?
「気をつけて。喉に詰めないように」


ハラハラしながら見守る。

高島 望は「ふんふん」と相槌を打ちながらも箸を止めようとはせず、一気に鍋の中身は半分くらいに減ってしまった。



「カツラも食えよ」


ようやく少し落ち着けたのか、そんな一言がかかる。


「呼び捨て禁止!『さん』くらい付けて!」


「カツラさん、食べて下さい」


「棒読みだね。…まあいいけど」


母のお金で作ったすき焼きだしね…と手を伸ばす。

産地指定の黒毛和牛は、蕩けるような甘さを口の中に残して消えた。



「美味し〜〜っ!!」


ん〜〜っ!と手を握って震わす。


「だろう?コレも旨いから食ってみろよ」


自分の端で摘まんだ餅巾着を入れられた。



「ほら、ほら!」



この男は言葉だけでなく、箸使いのマナーも教える必要があるらしい。



「食べるわよ。食べればいいんでしょ」



湯気の立つ熱そうな餅巾着を頬張る。

味の沁み込んだ油揚げは甘辛く、中の餅の淡白さと丁度いい加減にマッチする。



「んっ!」


「なっ?旨いだろう?」


得意げに聞く男に向かって頷き返すと、「良かった〜〜」と子供のように微笑まれた。



(単純な男…)


ふふん…と鼻で笑ってお肉と野菜と餅巾着のすき焼きを食べ終えた。




「なぁなぁ、〆は?」


「〆?」


私はもうお腹いっぱいなんだけど。




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