未熟女でも恋していいですか?
運命だな……と何故か思った。

それはきっと、場所が場所だったせいだろう。


亡くなった母親と同じ場所でカツラと再会した。

導かれている……と、錯覚でもなくそう思った。



あの夜のことを聞き出すのは今しかない。

この高尚な場所でなら、きっとカツラも話せると考えた。


話し終えた後、ブルブルと震えながら自分の体を抱いて泣いた。

こんな恐怖を閉じ込めたまま、一生1人で生きていこうと覚悟を決めていたのか…と思うと不憫だった。



その場で抱きしめてやりたい気持ちを何とか抑え込んだ。

走り去って行く背中を見つめながら何とかしてやりたい…と強く願った。


心の傷が癒せるよう、せめて不安なく一緒に居てやりたい。

体に触れられることがなくても心に触れられればいい…と、言い聞かせて我慢した。



けれど、今日のカツラの顔を見て、何かが少し変わった…と感じた。


俺自身ではなく、カツラの方が変化している。


やっと視線が俺を見るようになった。

聞いてもこなかった家族のことを聞く耳を持ってくれた。



引かれている線が緩んだ。

ハードルを低くして、飛び越えようとしてる。




「カツラ…」


藤の花と同じように淡いピンク色の頬に触った。


ピクリと動いた女は、目を見開いたままじっとしている。



怖がっている風には見えない。


でも、いきなり迫ると心を閉ざすに違いない。


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