未熟女でも恋していいですか?
(でも、この人は腹ペコアオムシだったか……)



「〆はうどんにでもする?」


「さんせーい!何でもいい!!」



1玉35円のうどんを入れて再び火を点ける。


茶色く味の沁みたうどんを器に入れた高島は、生卵を落としてかき混ぜた。



「こうすると卵が半熟で余計に旨いんだよ〜〜!」



まるで鍋奉行みたいなことを言って食べ切った。

平鍋いっぱいに作ったすき焼きは空っぽ。

底が綺麗に見渡せている。




「ご馳走さんでした!!感謝感激です!!」


食べ始めと同じく丁寧に手を合わせると、食器の片付けを手伝ってくれようとした。



「片付けはしなくていいから」


とにかく食事は済んだから出てって。

そう言おうとしている側から隣の和室へと移動している。



「あっ…そこは……!」



呼び止めようにも遅い。


高島 望は仏壇の母の遺影に気づいてしまった。

無言で立ち向かい、じ…っと写真に見入っている。




「……2月の末に亡くなったの。脳梗塞で」



まだ還暦を過ぎたばかりだった。

20代で私を生んだ母はやっと定年退職をして、これから自分の人生を謳歌するところだった。




「……そっか…」



仏壇の前に座った。

綺麗に切り揃えられた爪の付いた手でマッチを擦り、ロウソクに火を灯す。

1本1本が太く見える指先で、楊枝のように細く見える線香を2本摘まんだ。






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