未熟女でも恋していいですか?
呆れ返った様な顔つきだ。

誰が真剣に食おうなんて考えるか。


「藤の花って結実させたら駄目らしいの。だから直ぐに取らないと。それから枝の剪定の準備も始めないと大変なことになるから…」


「大変なこと?」


何だそりゃ。


「新しく延びてくる蔓の勢いが凄いの。放っとくとどんどん延びていって、いろんな場所に絡みつく」


「へぇー、男みたいだな」


「えっ…」


「若い男と同じだろ?抑え効かねーっつぅか、やたら勢いばっかで…」


喋ったところで気がついた。


(しまった……この話はマズい……)


ちらっと目線を上げると、カツラの表情は曇ってる。

思い出したくもない過去が頭を過ぎり、そんな表情をさせてしまったらしい。


「ま、まぁ…蔓のことは任せろ。いい具合に棚を仕上げてやるから」


気を留めない様に声をかけた。

カツラは俺の方に目を向け、「お願いします…」と小さく呟いた。




(あーあ、失敗……)


ガチャガチャ…と食器洗いをしながら反省する。

言ってはならないことを言ってしまったお詫びに「洗い物はしてやる」と替わった。


カツラは自分の部屋にも行かず、じっと仏壇の前に座ってる。

両親の写真に向かって、何かを語りかけてるみたいだ。



(何を話してるんだろう。俺のこと……かな)


自惚れもいい加減にしておこう。

あの思いを伝えた日からこっち、俺たちの関係性には目立った変化もないんだから。


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