未熟女でも恋していいですか?
「あの……の、望さん……」


名前で呼んでくれる様になったのはいいが、どうも言い淀む癖が抜けねぇな。


「何だ?」


食器を洗い終えて仏間に向かう。


「来月、お母さんの百か日でしょう?その法要をご住職にお願いしないといけないんです。それから父の月命日も一緒にしようかと思っているんですけど…」


「分かった。おっさんに言っとけばいいんだな」


祖母の弟の顔を思い出した。


「宜しくお願いします」


仏壇に向き直って、嬉しそうに線香の火を灯す。

手にしたガラス玉の数珠が、白くて長い指を通った。


「一緒に拝むよ」


俺は本来、仏だの神様だのは信じない。

でも、こいつとの縁だけは奇妙なものを感じていた。


項垂れているカツラの横顔を見るのは好きだ。

白い頸が光ってて、どうにも抑えられないものを感じる。


……でも、手を出したら嫌われる。

この女はまだ、傷を抱え込んだままだ……。




「何ですか?こっちばかり見て」


笑い顔も好きだ。

目の錯覚ではない。綺麗だと思う。


「カツラがあんまり熱心だから見入ってた。お前は信心深いな」


「自分の親だからでしょ?親のいる人には分からないと思うわ。私だって、母が亡くなるまでは分からなかったの。たった1人になって、やっと親の有り難みが分かった…」


泣きそうな顔をして微笑む。

親の話をする時、カツラはいつもそんな顔をする。


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