未熟女でも恋していいですか?
弟のように思っていた時期もあった。

高校を卒業したら、株券を取り扱う会社に就職したいと言っていた。



(夢は…叶えたのかしら……)


思いがけず出会った過去の傷。

でも、何処にも負の要素は残っていなかった。


明るい顔をして笑っていた。

奥さんも子供もいて、幸せそうだった。


闇の中に引きこもっているんじゃないかと心配していたこともあった。

だから、すごく嬉しさも感じた。


……なのに、やはり悔しさの方が増す。

同じ時間が流れていても、私はまだ闇の中から抜け出せていない。


……今日、やっとその出口へ向かう決心がついた。

そこで彼に会ったのも何かの縁なのだろうか……。



(望さんに会いたい………)


ブルブルと震える手で携帯を握った。

ロックを解除しようとする反面、こんなことで彼を心配させてはいけない…と考えた。



(大丈夫……怖がらなくても、家に帰れば会える………)


バクバクと鳴る心音を落ち着かせるつもりで深呼吸を繰り返した。

次第に落ち着きを取り戻し、その後は何とか目的の物を買って家路に着いた。





「ただいま!」


大きな声を上げても高島の姿はない。

ガラン…とした廊下の端に座り込み、暗くなりそうな視界に浮かぶ涙を拭った。



「ひっ……く………」


子供みたいだな…と我ながら呆れる。

でも、泣けて仕方ない。



(望さん……早く帰ってきて………)



心細さが増す。

たった1人で住むことなんて、私にはもうできないんだ。


< 183 / 190 >

この作品をシェア

pagetop