未熟女でも恋していいですか?
「……カツラ?…どうした?」


表の方から声が聞こえた。

振り向いた先に背の高い男がいる。


「早かったな。肉は買ったか?」


アオムシだった男が笑う。

この家に初めて来た時から何処か憎めない人だった。



「望さん!」


立ち上がって、しがみ付いた。


「えっ!?おいっ、何だ!?どうした!?」


混乱している。


「良かった………会いたかった…………」



ぎゅっと掌を握りしめた。

胸板に当てた耳に、彼の心音が聞こえてくる。



(生きてる。この人は生きてる……)



息を引き取った母の胸で泣いた。

微かな音もしない胸板は、それでもやはり温かだった。


あの日、母と一緒に死ねたらいいのに…と願った。

でも、今は生きてて良かった…と思う。



(望さんに会えて良かった…。お母さん、本当にありがとう………)


いつまでもバカみたいに泣く私を見て、困った様に背中を抱かれた。


「何かあったのか?」


心配そうに聞いてくる。


「うん……懐かしい生徒に会ったの。幸せそうで……羨ましかった………」


妬ましい気持ちも生まれた。

でも、今はそう思わない。


(私にも、大事な人ができたから……)



光の中を歩いて行ける…と思った。

私はようやく、長いトンネルを抜け出せたんだ…と実感した。


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