未熟女でも恋していいですか?
「何か困ってることないか?」


唐突な質問に戸惑った。

でも。


「あります。大有り」


「何だ?」


「あなたがこの家に居ては困ります。即刻出て行って下さい!」


「もう夜中なのに?」


「えっ…」


キッチンの壁に掛けられた電波時計は1時を示している。


「うそ……」


疲れきっていたのだろうか。

さっきはまだ昼間だったのに。


「もう遅いんだから泊まってっていいだろ」



「駄目です!出てって!」


そう言いたい言葉を呑み込んだ。

何故かと言うと、高島 望が流しのすぐ側に立っていたからだ。



『逆上して犯行に及んだ』



サスペンス劇場や推理小説の中に出てくる一文が浮かんだ。


包丁は扉を開けたら直ぐの場所に仕舞ってある。

ここでこの人を怒らせたら後が怖い。



「今夜はもういいです。でも、あの部屋から出ないで」


和室を指差す。


「別にいいよ。俺は横になれさえすればいいんだから」


プライドとか無さそうに笑っている。


平気で人の家に泊まり込めるその神経の図太さだけは買おう。



「だったらおやすみなさい。明日は…今朝は私も仕事があるので、早くに起こしますよ」


「はいはい。構わねぇよ」



少しは構え!…と心でボヤく。

その声を聞き止めたかのように、ニヤッと口角が上がった。



「…おやすみ。カツラ」


「さん、でしょ!」


「はいはい、カツラ、さん!」




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