未熟女でも恋していいですか?
笑い飛ばす男の背中に刃物を突き立ててやりたい…と思いながら見送った。


男が居る家でお風呂に入るのは嫌だけれど、そのまま寝るのも気色が悪い。


(鍵を閉めよう…)


脱衣所には何故か昔から鍵が付いている。

母と2人だけだったから使ったことは一度もないけど。


ガチャッと音を立てて閉めた。


服を脱ぎながらも緊張が走る。


こそっと静かに、なるべく音を立てずに脱いで浴室へ移動し、これまたなるべく水音も立てずにお湯に浸かった。




(生き返る……)



ほぉ…っと深く息を吐いて顎下まで浸かる。

透明な湯から湧き上がる湯気が、白く透明に霞みながら立ち上っていく。

その様を眺めながら思い出したのは、昼間見た高島の背中だ。


深々と腰を折り曲げて一礼していた。

母の通夜や葬儀にきた人の中で、誰があそこまで深い礼をしていただろう。



(変な男)


何度考えてもそう思う。


…そう。あの人は男だ。

父が亡くなってから初めて我が家に泊まった他人の男。

左官だか何だか知らないけれど、胡散臭いことには違いない。



とっとと追い出そう。

絶対に一緒になんか住わない。



(そうよ!例えどんなにお母さんが言った…と言われても…!)



ザバッ!と水音を立てて上がった。

しまった!と思いつつ、後は音を控えながら洗髪と洗身をした。


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