未熟女でも恋していいですか?
「朝よ!起きて!」


機嫌の悪い声で男を起こす。

深緑色の分厚い座布団を枕に眠っていた男は、「あ〜〜?」と不可解そうな声を出して目を開けた。



「6時半よ!起きて!」


「ろくじはん?」


絶対に時間だと理解して無さそうな声が反復している。


「そう。朝の6時半です!起きて!」


朝ご飯の支度は整えてある。

今朝はパン食にした。

50日間、ずっと朝は米を食べてきたから。



「あ〜〜、朝……ね」


「そうです!」


やっと納得いったか。


むくっと上半身を起こした男は、そのままの姿勢で静止している。

右手のひらで額を支えるようなポーズを取り、肘を折り曲げた膝の上に付いている。

まだ寝惚けているらしく、暫くものも言えずにいた。



「……頭がフラつく」


「低血圧なの?」



立ったまま腕組みして聞いた。



「そうじゃねーけど……そうかも」


「どっちよ」


「分からね」


つまり、それくらい頭がぼぉーとしているってことなんだろうか。



(だからって、容赦はしないけどね)



「さっさと起きてご飯食べて下さい!それから、直ぐに出てって!」


「またそれか」


「またそれです!…と言うか、当然でしょう!」



他人なんだから。



「当然…ね。そうかよ…」


呆れ気味に聞こえる声に言葉を返すのを止めて、キッチンへ戻った。

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