未熟女でも恋していいですか?
「じゃあ、お願いします」


通勤服に着替えて表に出た。



「ゲッ!何だ、その格好!」


「何…って、通勤スタイルですけど?」


自分の服装を目で確かめる。

別におかしい所はないつもりだけれど。



「色気なさ過ぎ!あんたの職業って一体何!?」


「高校の教師です。国語担当」


正確には、古文と現代国語。



「ガッコの先生だったのか……どおりで言葉遣いに厳しい訳だ」


納得の仕方が妙だけど許そう。

どうせ帰ったらもう居ない人なんだから。



「本当にお金支払わなくていいの?」


「大丈夫!古材貰ってきて柱を交換するだけだから金は要らねぇ」


「古材なんて使って直ぐにまた腐らない?」


「そこまで古いのなんか貰わねーよ。安心しておけ」



できるか。

いや、でも、して貰わないと困るし。



「じゃあお願いね。…行ってくるから」


「ああ、行ってらっしゃい」



「あ……は、はい…行ってきます……」



妙な感じ。

家族でもないのに送られた。




表の細い通りを進みながら母が生きていた頃を思い出す。

幼い頃、振り向くと母の顔が私を見ていた。

その顔に手を振りながら意気揚々とスキップして学校へ通った。




(…いる訳ないか)



そう思いつつも何気に振り返る。

ドキン…と胸が脈打つ。



(あ……)


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