未熟女でも恋していいですか?
高島が私を見送っている。

正確には、車に乗り込もうとしていただけなのかもしれないけれど。



「何だ?どうした?」


私の視線に気づいて声をかけた。


「いえ、何でもありません」


直ぐに向き直って歩き進める。


高島の声が何か呟く。

きっと「おかしな奴」くらい言ったのだろう。




(バカな私。後ろを振り向くなんて…)


前を向いてだけ生きよう…と決めてるのに、後ろを見返すだなんて初めてにも近い。


けれど、この気持ちの騒めきようは何だ。

家に帰った時、また1人になる自分が想像できない今がある。



どうしようもない騒々しさを胸の中に隠しながらの通勤。

それは、あの年と何だか似ている……。



(……考えない。思い出さない!)



自分に言い聞かせながら歩く道。


私にはこの道しかないんだ。

1人で生きていくと決めた、この道しか………




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