未熟女でも恋していいですか?
恐怖心を露わにして扉にかけてる手の力を強めた。

なのに、相手の方が力が強くて一向に閉まらない。


ガタタ…ガタガタ…と扉は震える音を出し、それが余計でも恐怖心を煽る。



「け…警察呼びますよ…!」


「呼べるもんなら呼べんでみろよ!」


開き直る相手の態度に「じゃあ…」と手を離した隙に外へと引き出された。



「あんた、これを見ても何とも思わねーのか!?」



引っ張られて向かい合わされた家の壁には、剥がれ落ちたペンキの跡が拡がってる。

ライトベージュの壁は長年の風月に耐えてきたせいで、見事に茶褐色に変色していた。



「ずっとメンテナンスしてねーだろう。見ろよ。家が泣いてるぞ!」



指差す男はムカついた表情を浮かべて私と壁を見比べる。

家が泣くなんてことはこの人の想像上のことだけど、確かに見栄えのいい状態ではない。


でも。


「いいんです!どうせ、私1人が住むんですから!」


そう。雨露さえ凌げればいい。

壁のペンキが剥がれて、どんなに見窄らしく見えてもどうってことない。

誰にも迷惑なんて掛からない。

住んでる私は、何も困りはしないのだから。



「呆れた女だな。家がこんな状態でいると、中に住む人間にも悪影響が出るんだぞ!」



(悪影響……)



詐欺もここまでくると巧妙だな…と思った。

恐怖心を煽るだけでなく、不安感まで誘うとは。



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