未熟女でも恋していいですか?
サーッと流れだす水道音に耳を傾けながら背中を見つめる。

この人とは昨日出会ったばかりなのに、何故か不思議なほど親近感が湧く。




何故だろう。

どうして、こんなに安心するんだろう……。




「カツラぁ」


「…な、何…」


呼び捨てにはまだ慣れない。

この男のことも、暫くは名前を呼ばずに話そう。



「俺、何処で寝ればいい?お前の部屋?」


「じょ、ジョーダンじゃありません!!」


前言撤回!

とんだ狼おじさんだ。


「ジョークだよ。本気にすんな!」


「するわ!バカを言うのも休み休みにして!」


「あっはっはっは!」


笑い飛ばされた。

それも何だかムカついてくる。



「寝るのはお母さんと一緒の部屋にして!ついでに言うなら父も一緒よ!」


「…お父さん?親父さんも死んでるのか?」


意外そうに振り向かれた。


「ええ。私が5歳の頃に病死したの。写真を飾ってないのは母がそれを好まなかったからで、仏壇の引き出し手に入れてある。でも…そうね。そろそろ出してもいいよね…」


忌明けを過ぎたら魂はこの世を離れるとお坊さんが言っていた。

その言葉の通りなら、写真を出しても母は怒らない筈だ、



仏壇のある部屋に入って、黒檀の細い引き出しを開けた。



(あった…!)



数年ぶりに見る父の笑顔。




「……へぇー。イカしてるな」


ギクッとする声に背筋が伸びる。


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