未熟女でも恋していいですか?
振り向いた後ろから高島が写真を覗き込んでいた。


「俺ほどじゃないがイケてるぞ」


(あんた以上にイケてるよ!)



声は発せず、心の中で訴えて母の横に写真を並べた。



「カツラの両親揃い踏みか…」


「まあね」



何十年ぶり?

今頃向こうの岸辺でどんな話をしているだろう。




「拝ませて」


私の横に来ようとする。


「私が先よ」


「いいじゃねぇか。一緒に拝もうぜ」


数珠掛けに掛けてある輪を取り、ガラス玉の付いた方を私に手渡す。

大きくて分厚そうな指がマッチを擦り、ロウソクに火を灯した。




「南無……」


昨日もそうだったが、それ以上の言葉は胸で唱える。

その仕草を真横で見つめながら、そっと手を合わせて拝んだ。





(お父さん…お母さんとは会えましたか?)


昨夜見た夢が頭の中に浮かび、きゅん…と胸が熱くなる。

鼻の奥に感じだした涙の雰囲気に目を開け、ほぉ……と息を吐いた。



「……いい顔だな」


声のする方を向いた。


「なかなかどうして、そそられるものがある」


ゾクッとする様な言葉に立ち上がった。



『出てって!…即刻この家から!!』


言いたいのに声が出せない。

足が震えてきて、動こうにも動き出せない。



(お母さん…!助けて…っ!)



カタカタ…と膝が震えだす。

その私の様子を眺め、高島がフン!……と鼻息を鳴らした。


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