未熟女でも恋していいですか?
呆れながらトイレの前をすり抜けて部屋の中に入った。

直ぐに鍵をかけ、デスクの椅子に腰掛ける。


社会人になって買ったデスクセットは、教師として働きだした初任給で買ったもの。

かれこれ10年以上になる椅子に座り、肌に化粧水を塗り付けた。


吸い込まれていく水は、一気に肌の奥に浸透していく。

水気の無くなった肌に乳液を付け、仕上げに保湿クリームを塗り手繰った。



(完了…)


ホッとして顔を眺める。

薄くピンク色に蒸気しているのは、お風呂上がりのせいだと思う。



(そうよ、別に男がこの家にいるからじゃない)


男なんか居なくてもいい。

結婚なんてしなくても、自分は1人で生きていけるのだから。



パタン…と化粧箱の蓋を閉じた。

いつもならこの後、授業の準備をあれこれとするところだけれどーーー



「今日はもう寝よう…」


慣れない環境に疲れているし、何だかお湯に浸かり過ぎて逆上せているような感じもある。

きっと、いつも以上にたっぷりと入った熱めのお湯に、長く浸かっていたせいだ。



「ふぅ…」


ベッドに寝転びながらさっき廊下で出会った高島の顔が浮かんだ。


タオルを巻いて顔にペンキを付けていた時よりも数段いい男に見えた。


男は殆ど知らないけれど、あの顔は別に嫌いな方ではない。



(だからって、好きでもないけど…)



ふん…!と鼻息を漏らして目を閉じた。


昨夜と同じ楽しい夢が見れますように…と、眠りに落ちながら祈った………。



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