未熟女でも恋していいですか?
名前も呼ばずにグラスを差し向けた。


「飲む飲む!喉カラッカラ!」


有難い…と寄ってくる。

まるで子供のようだと思いながら、水の入ったグラスを手渡した。


ピクッと指が動いた。

僅かに触れた指先に、ドキン!とする様な動悸を感じたからだ。


狼狽えるのを隠す様に背中を向ける。

流しに向かったまま、グラスの水を一気に飲み干す。



「はぁ〜」


美味しい。


「起き抜けの水って旨いよな」


「うん…」


何気なく返事をしてしまう。

振り返ると高島は、グラスを手に持ち首を傾げた。


「何だ?」


「いえ何も。もう一杯飲みますか?」


「いや、もういい。それより風呂場の扉見てもいいか?多分レールの歪みが原因だと思うけど、滑車にも油差した方がいいと思うし」


「もう見てくれるの?」


驚いた。

なんて素早い行動。


「善は急げ。これがモットーなんだ」


「ふぅん…」


やっぱりおかしな人だ。


「私が用意するものってありますか?」


仕事の準備をしようと思ったけれど、手伝えることがあるならしておきたい。


「今はいいよ。カツラもする事があって早起きしたんだろう?」


すっかり呼び捨てられている。


「まぁ…そうですけど…」


どうしてもやらなければならない事ではないけれどね。


「だったらそれを先にやれよ。要るものがあったら後で教える」


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