未熟女でも恋していいですか?
「あっはっはっは!それで結局任せて来たの?」


音無さんはケラケラ笑いながら聞き直した。


「だって、頑として家から出ないんだもん」


貴重品は部屋の金庫の中に片付けてある。

母から受け継いだ大事な物が、全てあの中に入っている。


「慎重派の仙道さんらしからぬ行動ね。その左官工の人、余程信用できるのね」


「信用なんてとんでもない!してもないよ!ただ仕方なく置いてやってるだけ!」


お金が入らないと言うのだから仕方ないでしょう…と続けた。

音無さんは笑いながら「人徳のある人なのね」と返してきた。


「人徳!?そんなの欠片もないわよ!あるのは食欲と目ヂカラだけ!今朝だって朝から2杯もご飯を食べるし、エンゲル係数が上がりそうで困るわ!」


無賃で家のメンテナンスはしてくれても、食費と光熱費は確実に掛かる。


「あははは!まるで高校生を持つ親みたいなことを言ってる!」


音無さんは他人事だと思うから気楽でいい。

悩んでいる私の身にも、少しくらいはなって欲しい。


「もう追い出さなくもいいんじゃない?その人がいい人なら一緒に暮らしてもらいなさいよ」


「冗談!絶対ヤダしっ!」


「でも、既に二晩も泊めてるんだし、どうせ今夜も泊まる予定なんでしょう?だったら別にいいんじゃない?」


笑っていた目が真剣になり始める。

何が音無さんをそこまで神妙にさせるのか、全くもって不可解だ。

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