未熟女でも恋していいですか?
(あの人が私に近寄ろうとしないからだ…)



それが甘いんだと、もう1人の自分が責める。

若かろうが中年だろうが男は男。


今は腹ペコアオムシの仮面を被っていても、それがいつ狼に変身するか分からない。

距離を少しづつ縮めていって、一気に襲われたりしたらどうしようもない。



ブルッと身を震わす。


結婚願望が無いのではない。

男に触れられると、さっきの様に気を失ってしまうからできないんだ。


何とか自分に暗示をかけることで、日常生活は滞りなく送れている。

今の学校は女子高だから、余計な神経も使わずに済んでいる。



その気持ちの緩みが高島を家に引き込ませたとしか思えない。

そうでなければ、あのまま銀行でサヨナラをしていた筈だ。




「お風呂……入ろう………」


高島の言う通り、熱めのお湯を足そう。

汗をすっかり流して、気分を変えなくては。





「もういいのか?」


ガスのスイッチを入れにキッチンへ行くと、仏壇の間に寝転んでいる高島から声をかけられた。



「ええ……まあ……」


男だと意識しないように俯いて答えた。

フラつく足取りを気にして、高島が起き上がる。


「大丈夫なのかよ」


寄ってこようとするのを手で止め、もう一度「平気」と言い聞かせた。



「お風呂……入るから…」


わざわざ宣言することでもない。


「ああ。気をつけろよ」


言い方が優しい。


さっき自分の目の前で気を失ったせいだろうか。


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