未熟女でも恋していいですか?
「ぷっ!……あんた、じき36歳か!」


アハハハ…と笑い声が上がる。

狭い車内に響く男性の笑い声を聞くのは初めて。

思った以上に嫌なもんではないみたいだ。


でも。



「歳聞いて笑うなんて最低!そんなの女の敵です!」


「敵って言うなよ。俺だってもう直ぐ40になる39だからさ」


「39?」


(うっそー!絶対私より若く見えるのにぃーー?)



またしても心の声を読んだような顔つきをされた。

高島 望と名乗った男は、横目で私の顔を見て囁いた。


「俺を年下だと思っただろ。お生憎様、俺の方が年上だからな!」


威張ってどうする…と思うような言葉を吐くと、彼は銀行の駐車場に着いたぞと言って車を止めた。



「どうもありがとうございました。お陰様で助かりました」


一応、お礼は述べておこう。いろいろと失礼な言葉は聞いたけど。



「帰りも送ってってやるよ」


「遠慮致します。買い物をして帰るので歩きます」



家までついて来られては迷惑。

また外壁の塗装をさせて欲しいと言われてしまいそうだ。



「別に遠慮しなくてもいいけどな」


「普通に遠慮するでしょう。他人なんだから」


「他人ね。まっ、それもそうか」


じゃあな!とキャッシュコーナーへ行く。

その背中の広さを確かめて、銀行の窓口へと足を運んだ。




「すみません、亡くなった母の預金通帳を解約しに来たんですけど……」






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