なみだ雨
ビックリしたような顔。
隣の住人は、開いた口が塞がらないという風に漫画のような顔をしている。
その途端、航平の腕の中からはるかは飛び出した。
軽く突き飛ばされたような感覚に、
航平は壁にぶつかってしまう。
「え…」
「え、なんで…」
「ねー牛乳まだー?」
女の人の声が聞こえ、玄関から顔を覗かせた女の人。
その人もはるかを見た瞬間、まさに絶句といった表情で固まる。
はるかが1歩ずつ近づいていく。
ふらふらした足取りだが、一歩一歩確実に。
梁島さんだ。梁島さんがいる。夢かな、これ。
夢ではないことを祈って、
でも、
夢であることを祈って、
はるかは手を差し出した。
練も、ぎこちなく、差し出された手を握ろうとする。
その瞬間、
とてつもない吐き気に襲われて。
はるかは、
練の胸めがけて盛大に胃の中の物をぶちまけた。