なみだ雨
「よかった…」
常連さんが呟く。
「え?」
「昨日、なんか様子がおかしかったから」
思わず目をそらしてしまった。
そんなことを気にせず、
ありがとうございます、
とお礼を言ってお店を出る。
忘れていたのに、思い出してしまった。
ゾクッと背筋が強ばった。
あの行為の時、
初めておじさんを"男"だと思った。
さっきまで笑顔で話せていた常連さんも
男なんだと思うと、
どうしていいかわからない恐怖が
じわじわと襲ってきた。