なみだ雨
一人残った部屋の真ん中で、
練は携帯をポケットから出した。
『仕事が忙しかった』
そんなことは言い訳で。
本当のところは
『面倒臭いとちょっとでも思ってしまうのが嫌だった』
だからなるべく、携帯を見ないようにしていた。
画面をつけると、
おびただしい数のラインの通知。
ほとんどが、成美からだった。
『妊娠したの、わたし。練。あなたの子供だよ』
そんな事を言われてから、
成海のすべてが本当にわからなくなった。
『産んでいい?』
練は、携帯の電源をまた消した。
「返さないんですか?」
後ろからはるかの声がして、
勢いよく振り向いた。
そこには濡れた髪をタオルで拭いている
はるか。
「すみません、見てしまって」
「…いえ」
「彼女?」
練は首を横に振った。
「元、です」
「させたの?妊娠」
今度も首を横に振った。