なみだ雨
久しぶりに来たアパート。
練の部屋を見ると、窓から電気が見えた。
はるかは一段一段、
足音が響かないように登っていく。
ドアの前に立つと、
中から料理している音が聞こえる。
美味しそうな匂い。
インターホンを押したくなる衝動を
ぐっとこらえて、
ドアの前に紙袋を置いた。
ガシャっと小さく音がして、手を離した。
そのまま、ゆっくりとその場から離れた。
家までは遠い。
ポケットに手を突っ込んで、
アパートを出た。