イジワルな初恋
「こ、告白?えっと、べつに……」

「とぼけなくていいよー、私覚えてるもん」

イジメたことは忘れても、こういうことだけは覚えてるんだ。


「中矢でしょ?」

再び私に耳打ちをした。

古藤さんにその名前を言われると、沸々と怒りがわいてくる。

「せっかくだから付き合えばよかったのにでもさすがに嫌か~」

なんでそんなこと言えるの?あなたが私に何を言ったのか、全部忘れたの?
テーブルの下でグッと拳を握りしめた。


「三年間ずっと坊主だし~」

野球部なんだから、坊主は当たり前だ。

「毎日無駄に騒いでて~」

明るいって言ってよ。

「男ばっかりでつるんでて、色気もなにもないし~」

友達が多いのは信頼されてるから。ていうか、中学生に色気なんか必要ない。

「面倒な係とかバカみたいになんでも進んでやって~」

優しいんだよ…私なんかと比べ物にならないくらい、心が温かくて……。


「もう、いい……」

いい加減にして!そういおうとしたとき、中矢君と同じ野球部だった山野井謙二(やまのいけんじ)君が入口に向かって大きく手を振った。


「遅かったじゃん!」


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