イジワルな初恋
「だろ?中学のときに俺の魅力に気づいてりゃよかったな」


え……?今のは聞き間違い?


「ほんと惜しいことしたー。でも今からでも間に合うんじゃない?」

「ん~どうだろうな~、一番じゃなくてもいいなら」

そういって古藤さんの長い髪にそっと触れると、古藤さんの耳があっという間に赤くなっていく。


は……?
なんなのこれ、夢?
このチャラい人、誰!?


「ヤダー、うけるー。そんなにいっぱいいるんだ」

「女の子はみんなかわいいからね。ひとりに絞るのは難しいかな~」


呆気にとられた私はこれが本当に中矢君なのか、疑いの目でジーっと見つめる。


「なに見てんの?俺に惚れた?」

「はっ……!?み、見てません」

驚いて視線を逸らすと、中矢君が私の隣に移動してきた。

「久しぶり……」

耳元でそう言われ、中矢君の吐息が伝わった瞬間、私の体は完全に固まった。


「岩崎さんあんまり喋りたくないみたいだし、こっち向いてよ」

さっきまで私を梨々香と呼んでいたはずの古藤さんが、中矢君の腕を揺らしながら甘えたような口調で中矢君を見つめている……。


これはいったい、なんなんだろう……。


昔を思い出して苦しくなったり、でも会いたいっていう気持ちが強くなって、勇気を出して同窓会に参加した。

ただ、中矢君に会いたかったから。

それなのに……。

悲しいのか悔しいのか、もうなにがなんだか分からない感情をどこにもぶつけることができず、昔とすっかり変わってしまった中矢君を、ただ呆然と見つめることしかできない。





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