イジワルな初恋
「よー相変わらずだな」
山野井君がビールを片手に私の向かいに座った。
「相変わらずって、謙二とはしょっちゅう会ってんだろ」
中矢君の隣にはピッタリ寄り添ってる古藤さん。そんなふたりを見たくなくて、私は目の前にいる山野井君を見ていた。
「そういうんじゃなくてさ、おまえ相変わらず」
「謙二!余計なこと言うなよ!」
山野井君の言葉を遮った中矢君が、突然立ち上がり私の頭に手を乗せた。
え、なに……?
「十年振りにぶっちゃけるけどさ……中矢太一、中学の卒業式目前で、こちらの岩崎梨々香にフラれました~」
なに、言ってるの……?
「思春期だった俺の心はちょっぴり傷ついたわけで」
ちょっと待ってよ……。
「まじかよー」
「知らなかった」
「他にも誰かぶっちゃけろよ~」
私の気持ちとは裏腹に、みんな勝手に盛り上がってる。
やっぱり、来るんじゃなかった。
十年前のまま、そのまま大事に取っておけば……。
「ごめん、明日仕事だから」
消えそうなくらい小さな声で呟いて、足早にその場を後にした。