イジワルな初恋
戸惑い
「はぁ……」
「なんか今日ため息多くないですか?幸せ逃げちゃいますよ」
遅めの昼休み、私は優菜ちゃんと一緒にデパート関係者専用の休憩室でお弁当を食べていた。
そりゃそうだよ。
昨日のこと、できるなら私の記憶から消去したい。
もう過ぎたことなんだから考えなきゃいいのに、こうしてため息が出てしまうのは、それだけ私の中で彼は大きな存在だったって証拠だ。
「幸せなんてとっくに逃げてるよ」
「ちょっとー岩崎さん、なにかあったんですか?そんなになるなんて珍しいですよね?」
五歳年下の優菜ちゃんが心配してしまうほど、今の私の顔はどんより雲って見えるんだろうか。
「ありがとう、でも大丈夫だよ。移転まであと十日だし、気合い入れないと」
そう、私には感傷に浸って落ち込んでる暇なんてないんだ。忙しいっていうことがせめてもの救いかもしれない。