イジワルな初恋
「岩崎?」

固まっている私を、不思議そうに見ている鏡部長。

「あっ、あ……は、初めまして、岩崎です」

とっさにそう言ってしまった。


「この前お店で会ったんですが覚えてますか?八木沢です!」

私とは対照的に、ようやく会えたと言わんばかりのうれしそうな表情の優菜ちゃん。

「もちろん、覚えてるよ」

チラッと横目で私を見た後、優菜ちゃんに向かって笑顔で挨拶をした。

なんなの、今の目……。嘘つきとでもいいたいの?仕方ないじゃない。

同級生だって言った途端、きっと部長も優菜ちゃんも驚いていろいろ聞いてくる。
中学時代はどうだったの?とか。それでまた中矢くんがこの前みたいなことをみんなの前で言ったら……。


「中矢は入社してすぐ宇都宮のfree man'sに配属されて、一年前に事業部に異動になったんだ」

部長の説明を聞いても、まだ信じられない気持ちだった。

大学卒業後に入社ってことは、三年も前から同じ会社だったってこと。
確かに各店舗の従業員全員に会うわけじゃないし、それどころか多分事業部や一緒に研修を受けた同期、近くの店舗の人たち以外と会うことはほとんどない。宇都宮じゃ尚更だ。


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