イジワルな初恋
これ以上中矢君の近くにいると息苦しくなりそうだったから、私はその場から離れて店長にリストを見せた。

「これでお願いします」

店長はジッとリストを眺めている。まさか広野くんと同じように突き返すとか?それは絶対有り得ない。売れ筋を中心にしっかり考えて決めたんだから。

「アクセサリーの方は、これでいいと思う」

の方は、ってなに?インナーウェアはダメって言いたいの?


「ちょっと見せてもらってもいいですか?」

中矢君が横から突然現れて、店長からリストを受け取った。

真剣な顔を見れば見るほど、同窓会での中矢君の姿が浮かんで腹が立ってしまう。

ここではあのチャラい感じは出さないわけ?部長に見せてあげればいいのに。


しばらくして中矢君の口から出た言葉に、私は唖然とした。


「本当にこれでいいと思ってんの?」


……は?


あまりにもびっくりし過ぎて言葉が出ない。


「店長もハッキリ言っていいんですよ。これじゃ駄目だって」

「岩崎は頑固だからなんて言おうか考えてしまったんだけど、中矢君がハッキリ言ってくれて助かるよ。じゃー説明任せていいね」

「ええ、大丈夫です」

ちょっと、なにふたりで勝手に盛り上がってんのよ!
中矢君も中矢君だけど、店長に頑固だなんて言われたくない!

「なにが?これのどこが駄目なのよ。この店で働いたこともない人に分かるわけ?」

周りを気にせずつい感情的になってしまった私を見て、鏡部長が間に入る。

「まー落ち着いて、取りあえず締めの作業終わらせてから、久しぶりに行くぞ」

鏡部長と広野君が飲みに行くらしく、そこに私と中矢君も誘われた。

お酒を飲む気分じゃなかったけど、このままじゃ納得できないから仕方ない。
優菜ちゃんは用事があるということで、渋々帰って行った。


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