イジワルな初恋
駅近くの大衆居酒屋に入り、とりあえずレモンサワーをひと口飲んだ私は、向かい側に座ってる中矢君に早速切り出した。

「説明して下さい」

「売れ筋の定番はだいたいこれでいいと思うけど、この辺のアンダーウェアは、なんでこれを置こうと思ったのか理解できない」

リストを指差している中矢君。

理解できないって、もっと言い方ってもんがあるでしょうよ!


「中矢さんは知らないだろうけど、今はこういう遊び心が入った柄も流行ってるの。4階のときは十代の若い世代から大人まで結構売れ筋でした!三階は確かに若いお客様は減るだろうけど、人気なのは変わらないと思いますよ」

部長と広野君がいるから、あまり強く言えないのがもどかしい。


「岩崎さんさー」

「なんですか!?」

「男のパンツ見たことあんの?」

「はっ!?な……なに言ってんの?バカじゃないの?そんなこと聞いてどうすんのよ!」

突然変なことを言われ、強い口調で言ってしまった。初めましての設定なのに、思わず昔みたいに『バカ』なんて言っちゃったじゃん。


「だってさ、こんな派手な柄のパンツ、履いてるの見たことある?」

「派手なのはないけど、普通のパンツなら私だって見ることくらいあったわよ!」

「へ~、あるんだ~?大人になったね」

「あるわよ!大人だもん!二十五歳ですから!」

わざと意地悪い言い方をするもんだから、つい挑発に乗ってしまい、部長と広野君が笑ってることに気づいた私は、恥ずかしくなって俯いた。



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