イジワルな初恋
「紳士服のブランドも並んでる三階のお客様は、今と比べて年齢層が上だろ?そういう人たちは個人の趣味もあるとは思うけど、基本的にはこういう奇抜な柄やデザインは自分では選ばない」


私だって適当に考えたわけじゃない。売れ筋を細かくチェックして、メーカーに問い合わせだってした。休日に自分で商品を見に行ったりもした。


「例えばプレゼントとかで買われる方はいるかもしれないけど、移転は十月だ。なんかイベントあるか?ないよな?四階の客層なら面白がって買う人も沢山いたかもしれないけど、三階じゃこんなに広く展開する必要はない。
もちろん常連もいるだろうし、アクセントとして置くのはアリだと思うけど」


……中矢君の意見がもっとも過ぎて、言い返せない自分が悔しい。

けど、同じデパート内での移転は初めてで、一階下にさがったくらいじゃそこまで変わらないと思ってた。

ずっと黙っている私を見かねて、部長が口を開いた。


「中矢はさ、ふざけてるように見えて実は誰よりも真面目なんんだよ」



分かってる……。

そんなこと、ずっと昔から知ってるよ……。


真剣で真っ直ぐな言葉をいつもぶつけてくれたから、私は心を開くことができた。


そんな中矢君だから、私は……。




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