イジワルな初恋

「あったり前だろー?」

顔をパッと上げ私の右肩に自分の肘を置き、見下ろすようにしてニヤッと笑った中矢君。

「そりゃー女なんて、腐るほどいるよ。岩崎も、その中のひとりに入れてやろうか?」

前言撤回!!
なんなのよ、やっぱり私の知ってる中矢君じゃない!

もしかしたら……って思ったのに。

私を励ましてくれたとき、少しだけドキッとした……なんて口が裂けても絶対言わないんだから。


「結構です!」

フイッと顔を背けた方向から、電車が来るのが見えた。

「電車きたから帰ります!」


電車に乗り込もうとして一歩前に出た私の腕を中矢君が突然掴みグイッと自分に引き寄せ、私の耳元で囁いた。


「俺たちが同級生だってことと、昔お前に振られたことは、みんなには内緒にしてやるよ……りりー」


なっ……なんなの?弱みを握ってるとでも言いたいわけ?


呆然としてしまい、扉が閉まる寸前で電車に乗り込んだ私。

ホームに視線を移すと、中矢君は既に背を向けていた。


自分の気持ちが中矢君の言動ひとつ一つに掻き乱されてるのが分かる。

『岩崎』って呼ばれるたびに胸がギュッて苦しくなってたことも全部見透かされてるようで、余計に悔しい……。


チャラいと思ったら、やっぱり昔と変わらないかもって思ったり、でもやっぱり性格悪くて……。

いったいどれが本当の中矢君なのよ……、これ以上私の心を乱されたくない!

明日からは絶対平常心を保って、あんたなんかに構ってる暇ないって、そう分からせてやる!



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