イジワルな初恋
もう、わけわかんないよ……。

確かにいちいち中矢君に構うのが面倒だって思う時もある。
昔と違ってなんか軽いし、優しさも感じられない。最初はその変貌ぶりがショックだった。

だけど、それが本当に嫌だったかっていったら、嫌じゃなくなってるんだよ……。

私を元気づけようといつも明るくちょっかい出してきたあの頃と同じで、それが次第に心地よく感じてた。

だからこそ、中矢君が優菜ちゃんと仲よくしてたり、知らない女の話をしているのを聞くのが、本当はすごくつらかった。

でもそれを言葉にできず、わざと嫌がっているような態度をとってしまう私にも原因はある。だから……。



「同窓会で会ったとき、私の知ってる中矢君とは全然違ってて、正直戸惑った。十年も経てばそりゃ変わるのかもしれないけど……」


「なにが言いたいの?」


冷たく聞こえるその言葉に挫けそうになったけど、最後までちゃんと伝えようって、そう決心した。


「同じ会社だって知ったときは本当に驚いたけど、仕事に対して真剣な中矢君を見て、やっぱり真面目なところは昔と変わってなかった。
だから私は、意地悪されたりからかわれながらも、これからは仕事の相談とかも中矢君にしたいって思ってる。
それに……」


初めて私の目を見てくれた中矢君。
気づけば私たちは、通過する電車を何本も見送っていた。


言わなきゃ……伝えられなかった大切な気持ち。

弱かった私の心が、中矢君を傷つけてしまったこと。

十年経っても色褪せなかったあの頃の気持ちを……。



< 38 / 85 >

この作品をシェア

pagetop