イジワルな初恋
どうしたらいいのかなにも考えつかない私は、頭を下げることしかできない。


「岩崎、もういいから。ちょっとバタバタするかもしれないけど、朝届けば大丈夫だろ。とりあえずメーカーに確認して。店長、明日は全員出勤なんですよね?」

「はい。明日は末永と八木沢が遅番で、それ以外は通しです」

鏡部長の言葉に店長が答えると、私の隣にいた優菜ちゃんが手を上げた。

「朝荷物が届くなら、私も通しじゃダメですか?人数多い方がいいですよね?」

優菜ちゃん……。

今までみんなががんばってきて、今日の準備だって閉店後の作業は必要ないくらい順調にいくはずだったのに……。

メーカーに確認すると、通常通り朝の便で届けることはできるって言われたけど……。


「朝届いたんじゃ遅いですよ」

今まで黙っていた中矢君が突然部長に向かってそう言った。

「今までみんな残業しながらがんばってきたのはなんのためだよ。明日の朝、バタバタしながら大事なディスプレイや商品の準備して、それでいいのか?」


隣に立った中矢君を見上げると、その厳しい言葉とは裏腹に、とても優しい目で私を見ていた。


「私、今からメーカーに確認して取りに行きます!ただ、その間準備ができなくなってしまうけど……」

「幸いうちのメンバーはみんな真面目で仕事が早い。自分の準備が終わった者からインナーの手伝い、できるな?」

店長の言葉にみんなが頷いた。

泣きそうになったけど、泣いてる場合じゃない。
メーカーに連絡をして今から取りに行くことになった。


「さすがに電車じゃ荷物運べないから、一緒に」

「部長は店にいた方がいいので、俺が行きます。今日車なんで」

部長の言葉を遮って中矢君が言った。

「分かった、じゃーふたりとも頼むぞ。安全運転でな」


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