イジワルな初恋
メーカーから荷物を受け取りお店に連絡を入れ、道路が混んでいるため店に到着するのは十五時頃になりそうだと伝えた。


車に乗っている間、私たちはなにも喋らなかった。

呆れてるんだよね。いつも反論ばかりして、偉そうなこと言ったりもした。
そんな奴が大事な日に発注ミスをして、みんなに迷惑かけるなんて。

こんな私じゃ、中矢君が冷たくするのも当然だよ……。


静かな空間でふたりきりになること、昔は何度もあった。
だけどあのころの私たちは五分と黙っていることができなくて、必ずどちらかが話しかけて、プッと吹き出して、笑顔で互いに見つめ合う。

だけど今は、大人になった中矢君の横顔を、黙って見ていることしかできない……。



デパートに到着して台車で荷物を運ぶと、店を出る前よりも随分準備は進んでいた。

「よし、とりあえず……お前らは休憩行け。他はみんなもう済ませてるから」

「え?部長、私休憩なんていりません!」

ただでさえ迷惑掛けてるのに、これ以上みんなに負担かけられない。


だけど部長は、首を横に振った。

「腹減ってたんじゃ力出ないだろ、申し訳ないって気持ちがあるならまずはエネルギー満タンにしてこい」


部長に言われた私は、みんなに頭を下げてふたりで休憩に行き、コンビニでサンドイッチを買って休憩所に入ると、この時間だからか人はほとんどいなかった。



「あのさ、中矢君。車出してもらったり、いろいろごめんね……」


先に食事を終え、缶コーヒーを飲んでいる中矢君。


「別に謝る必要なんてねーよ」

「けど……」

「いいから、もう気にすんな。失敗なんて誰にでもあるだろ。それに……」

「中矢君?」

「昨日、あんな冷たい言い方することなかったなって……だから、俺も……ごめん」


昨日とは違う、優しい目をして私を見つめるから、ちょっと気を抜いたら涙が出てしまいそうで、私は急いでサンドイッチを口に運んだ。




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