イジワルな初恋
翌日は、予想していた以上のお客様が朝から来店してくれた。


棚に商品が無くならないよう、レジをしながら商品チェックをして補充したり、ケースの中の商品を見たいというお客様には、出して実際に手に取ってもらったり、お客様が触った鞄や小物が乱れていたら綺麗に整えたりもする。


途中合間をみてふたりずつ昼休憩に行き、最後に店長が休憩から帰ってきた時には十五時を回っていた。


閉店時間が近づくにつれて、段々とお客様の数は減っていく。


「ようやく落ち着いてきましたね」

優菜ちゃんが少し疲れた表情をして言った。

「そうだね。時間経つのがすごい早く感じたよ」

用意していたセール品はほぼ完売。売り上げ目標も無事達成することができた。


「思ってたよりお客様がきてくれて正直驚いたが、それだけここのfree man'sには顧客が多く、更には今回の移転で新規のお客様も増えたということだ。
明日から事業部の応援はないけど、みんな今後もがんばってください」


鏡部長はいつものように爽やかな笑顔を私たちに向けた。


そっか、事業部の応援も今日までなんだ……。

じゃーしばらくは鏡部長にも、中矢君にも……会えないってことか。


精神的にも肉体的にも疲れた二日間。まだしばらくは忙しい日々が続きそうだけど……。

そんなことを考えながら駅に向かっていた私は、一件のお店が目に入り足を止めた。


「あれ?岩崎さんどうしたんですか?」

「ねー優菜ちゃん、ちょっとだけ行かない?」


< 46 / 85 >

この作品をシェア

pagetop