イジワルな初恋
「そういえば、私中矢さんにはガッカリしました」

「え?」

中矢君のことを考えていたからか、優菜ちゃんの口からその名前が出たことに少し驚いてしまった。


「この前一緒にお昼行ったんですけど、なんていうか~見た目とのギャップありすぎで」


そうかな?昔の坊主頭だった頃の中矢君で今の性格だったら私もそう思うかもしれないけど……。


「もっと女慣れしてる軽い感じの人かと思ってました。イケメンだし、遊ぶ相手なら最高かと思ったけど」

遊ぶ相手って、優菜ちゃんなかなかの悪女っぷりだ。


「違ったの?」

「違う違う、もー全然ですよ!話す内容も仕事のことばかりで、真面目すぎて途中で飽きちゃいました。やっぱ遊ぶなら軽い人で、本気になるなら鏡部長みたいな渋い大人の男性がいいです」

鏡部長か……、確かに頼れるしかっこいいし落ち着いてるし、でも私は……。


「で、岩崎さんはどうなんですか?」

二杯目のシャンディーガフを飲みながらニヤリと笑う優菜ちゃん。

「な、なにが?」

「とぼけても無駄ですよ~。中矢さんとはどういう知り合いなんですか?」

「え?どういうって……」

明らかに焦った私は、既に空になっているグラスを口に運んでしまった。

「あんな仲いいやり取りしてたら誰だって分かりますよ」

隠さなきゃって思ってた私の思いは、なんの意味もなかったんだとやっと気づき、苦笑いを浮かべた。


「中学の同級生で、ただそれだけだよ」

「そうなんですか~?」

疑いの目で私を見る優菜ちゃんだけど、それ以上追及することはなかった。


同級生、ただそれだけだよ……。

少なくとも、中矢君はそう思ってるから……。


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