イジワルな初恋
「珍しくまとも、っていう言葉は余計ですけど!私もこのリング気に入りました」

「まさか岩崎さんと意見が合うなんてビックリだ」

わざと少し強めに言ってみたのに、またこうやって言い返されちゃうのが、本当に悔しい。

しかもなんか私の顔見て笑ってるし。


「気に入っていただけてうれしいです。でもおふたりは仲いいんですね?」

「そうなんですよ」

私たちのやり取りを戸惑いながら見ていた新保さんが何気なく言った言葉に、こうやってまた適当なことを言う中矢君。

この恋愛に効くパワーストーンの指輪をつけたいのは私だよ……。
そう思いながら、中矢君に言い返す気力のない私はピンク色の石が付いたリングを見つめていた。



「では、今回注文していただいた商品はすぐにお送りしますので、またなにかあったら連絡ください」

最後に新保さんが私にそう言い展示場を後にしようとエレベーターに乗り込むと、閉まる寸前で再び開いたドアから中矢君が入ってきた。


「駅まで、一緒に帰るか」


狭いエレベーターの中、展示会にいたときとは明らかに違うトーンでただひと言、中矢君がそう呟く。


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