イジワルな初恋
坂道、公園、図書館、学校……思い出の場所を辿り校門の前に立ったとき、私の目には涙が浮かんでいた。
私なんかと付き合ったら中矢君がみんなからからかわれてしまうんじゃないか、そう思って咄嗟にあんなことを言ってしまった。
中矢君のあの悲しそうな表情がずっと頭から離れず、まだ十五歳で恋愛経験もなかった私は、どうすることもできなくて……。
今の私なら、すぐに誤解を解いて本当の気持ちを伝えることができるのに、あのころの私には……その勇気がなかった。
一年間沢山の思い出をくれたのに、中矢君と距離を置いたまま卒業を迎えてしまい、そのまま十年。
そして、十年経って再会した彼を……私はまた好きになった。
ボーッとしながら中学校を眺めた後、私は再び歩き出した。
スマホで時間を確認すると、十六時。
私は駅前にある喫茶店で足を止めた。ここは山野井君の両親がやっている喫茶店で、中矢君と何度か訪れたことがある。