イジワルな初恋
足跡ー中矢sideー
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中学一年の二学期。
部活が始まる少し前、教室に忘れてきたタオルを取ってくるため校舎に戻ろうとしたとき、クラス別に育ててる花壇の前に一人の女子が立っていた。
花壇に水をやっているその女子のことがなんだか気になりジッと見つめていると、突然俺の心臓が大きく高鳴るのを感じた。
その女子の目から涙が溢れだし、頬を伝っていくのが見えたから……。
なんで泣いてるのかなんて分からない、このドキドキがなんなのかも分からない。
だけど、俺は彼女から目を逸らすことができなかった。
それから二年間、何度も彼女を見かけた。というよりも、気づくと彼女を探している自分がいた。
廊下や教室、登下校のときに何度も見ていたけど、俺は彼女の声や笑い顔を一度も見たことがない。
笑って欲しい……。
最初はただ、それだけの気持ちだった。