イジワルな初恋
二十五歳
「それからだったかな、アイツが真剣になるのを止めたのは」

山野井君の話を聞き終わった私は涙を堪えるので必死だった。


あんなに助けてもらって、毎日沢山の笑顔をくれたのに……私は、何をしてたんだろう……。

中矢君がそんなに辛い思いをしてたこと、なにも知らなかった。

それどころか、私のことなんて忘れて変わらず明るく元気に過ごしてるんだろうなって思ってた。

大好きだった野球ができないなんて、想像しただけで胸が苦しくなって。でもきっと中矢君はもっともっと苦しかったはず。


「同窓会のとき、太一のこと変わったなって思わなかった?」

「え?あ、うん」

「あれもさ、アイツなりに自分を守るための方法なんだよ。自分が適当で軽い人間だったら、そういう女しか寄ってこないって考えて。その方が楽なんだろうな」

「そっか……」

「岩崎のことは、かなり本気だったみたいだし。そのぶん傷も深かったんじゃないかな?」


山野井君の言葉が胸に突き刺さる。

「あ、ごめん!岩崎を責めてるつもりはないんだ。だってまだ十五だぜ?上手くいかなくて空回って傷ついて、そんなのあたり前なんだよ。まぁ大人になってどうするかは、本人次第だけどな」


顔を上げ山野井君を見つめると、私の心を読んだかのように山野井君はニコッと笑って言った。


「俺は近くで太一を見てきたけど、もしかしたらアイツの心はずっと十五歳から先に進めてないのかもな……。岩崎、公園の裏にあるグラウンド知ってるよな?あそこ行ってみ」



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