イジワルな初恋
山野井君にお礼を言い喫茶店を出た私は、言われた通りグラウンドへ向かった。

すでに十七時を過ぎ、徐々に日が沈み始めている。


フェンスに囲まれているグラウンドの入口から中を見ると、子供たちが野球をしていた。

必死になってボールを追いかけている子供たちの姿が、あのころの中矢君と重なる。


「よーし、次最後だぞ!」


え……!?

声のする方向へ視線を向けると、Tシャツにジャージ姿の男の人が子供たちに向けてノックをした。

「ボールよく見ろ!よしよし、ナイスキャッチ!」


汗をかきながら子供たちに笑顔を見せているのは、中矢君だった。


「今日はここまでな、みんな片付けてー。片付けも練習のうちだぞ。ほらユウキ、ふざけてないで動けー」


なんだか自然と笑みが溢れてしまう。

全然適当なんかじゃないじゃん。
ちゃんと真剣な目で、子供たちと向き合ってる。


私、ほんとバカだ……。うわべだけで判断して、中身を全然見てなかった。

中矢君はあのころと、なにも変わってなんかなかった。

ううん、違う……。たとえ十年前と変わっていたとしても、私は……。


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